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大阪高等裁判所 昭和35年(ラ)78号 決定

抗告人 小川繊維工業所こと小川次郎

被抗告人 玉工業株式会社

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。

先ず本件即時抗告の効力に付て考察する。記録に依ると、原裁判所は本年一月一一日午前一〇時破産宣告の決定をなし、その正本が同月一四日被申立人(抗告人)に送達せられ、之に対し、同人より同月二一日附抗告状を翌二十二日原裁判所に提出して受理せられ、原裁判所は公告嘱託中(大蔵省印刷局より公告通知未到着)と記載して本件記録を当裁判所に送付したものであつて、その後追送の書類によると破産宣告に関する官報公告の掲載日は同年一月二五日であることが認められる(尚原審は破産法第一一五条第一項第一一六条に基いて同庁及び泉佐野市役所の各掲示場に公告掲示をなしているが、之は戦時民事特別法第三条同法廃止法律附則第二項により不要である)。従つて、本件破産宣告に対する即時抗告期間は右官報掲載の日の翌日である同年一月二六日より起算して二週間であり、抗告人はこの期間開始前に即時抗告をなしたものである。かかる申立を適法な期間内の申立と全く同一視してよいかは一の問題である。併し乍らすでに抗告人に対し原決定正本の送達があつて、その内容が明かになつた後であり、その当時近々に公告手続の為されることも当然明かなところである。而も右申立を全く無効とするときは、すでに申立期間を経過している現在あらためて申立をなす余地もない。これらの点より考えると、原決定の正本送達後公告迄に申立てられた即時抗告はそのままで直ちに本来の効力を生ずるものではないが、後に公告手続がなされるのを待つて、始めて適法な申立としての効力を生じたものと解するのが相当である。

仍て抗告の理由とするところに付て考察するに、抗告人より被抗告人に対する債務がすでに示談済であつて、支払不能の状態でない事実は之を認めるに足る何等の疎明もない。その他記録を精査しても原決定には違法の廉はないから、本件抗告は理由がないものと認め、破産法第一〇八条民事訴訟法第四一四条第三八四条第八九条を適用し、主文のとおり決定する。

(裁判官 加納実 沢井種雄 本井巽)

申立の趣旨

一、原決定を取消す

申立人の破産申立を却下する。

との御決定を求める

抗告の理由

一、原裁判所は抗告人は被抗告人に対し手形金債務百七十二万二千九百円の債務ありて支払不能の理由で破産決定をしたが右債務については既に被抗告人との間に示談済にして支払不能の状態ではない従つて原決定は不当であるから茲に抗告申立をする。

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